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「お前のは言われない方が不安なんだよ」
土方はそう答えた。
ごもっとも。
美海も内心頷いた。
相変わらず沖田は咳が止まらない。
よく今まで我慢していたもんだな。
美海は逆に関心した。
「しかし、どうしますか?」
美海は土方を見た。
今になっての沖田の風邪の発覚。
宇都宮までもうすぐだ。
遠くはない。
大鳥圭介という歩兵奉行がいる。
今までの戦いにも参加していて、鳥羽・伏見の戦いでは榎本達と共に交戦を訴えている。
松平とも共にいたことがある。
そんな彼も今回の宇都宮の戦いに参加するのだが、旧幕府軍にいきなりの加入の割りには実力を十二分に認められている土方が気に入らないらしい。
まぁ土方の指揮力を知るものが旧幕府軍に多いのも事実なわけで、それは当然のように土方を仕立て上げる動きが見られた。
更に、土方も愛想は良くないわけで、ますます大鳥の反感を買った。【改善脫髮】四招避開活髮療程陷阱,正確生髮! -
そこで、土方は大鳥に宇都宮城を自分が攻め落とすと言ったのだ。
「うーん…」
土方は小さく唸った。
「私は出られますよ…ゲホッ…」
今がピークなのだろう。
休まないことには治るものも治らない。
「無理すんな」
沖田がいる、いないでは戦力に結構な差がでる。
と言っても、銃撃戦に持っていかれるとどうにもならないのだが。
「そうですよ」
美海も頷いた。
沖田は出すべきではない。
一歩間違えば、風邪が原因で倒れて死んでもおかしくない。
私が沖田さんの分も頑張るしかない。
次の日。
美海と沖田は物音で目覚めた。
「ん…?」
開かない瞼をどうにか開ける。
まだ暗い。というか部屋も暗い。
泥棒?
というか暗殺者?
コソコソと動いている人だけが見える。
怪しい。怪しすぎる。
沖田が刀を握った。
美海は頷き、部屋を灯す体制を整える。
シュッ
美海が提灯に火を着けたと同時に沖田が刀を抜いて突きつけた。
「ぅわぁっ!!」
間抜けな声を出して尻餅を着いた人物。
沖田は目を丸くする。
「なんだ。土方さんか…コホッ…」
「お前ら!起きてたなら言えよ!」
土方はまだちょうど洋装のパンツに刀を差し込んでいたようで刀を抜けなかった。
「起きてたなら言えよ!って土方さんが怪しすぎるからでしょ…」
美海はため息をついて座り込んだ。
「ま…まぁな…。てか総司!刀を下ろせ!」
沖田は未だに土方に刀を向けたままである。
「嫌です」
「はぁ!?」
沖田は当たり前のように答えた。
「土方さん。一人でコソコソと何をしているんですか?」
「いや…あの…」
パンッ
「何事ですか!?」
しどろもどろとなる土方を余所に、豪快に襖が開いた。
そこにはバッチリと戦闘武装した市村が立っていた。
それに続き、ゾロゾロとどうしたのかと隊士が集まる。
全員武装しており、銃まで構えている者もいた。
美海と沖田だけ未だに寝間着だ。
「「どういうことですか?」」
二人は土方を睨みながら聞いた。沖田の菊一文字が光る。
「はぁー…」
今度は土方がため息をついた。
「………つまりだな。単刀直入に言うと、お前ら。残れ」
「「はぁ!?」」
土方の隣で事を察したのか市村が頭をヘコヘコと下げて謝っている。
「馬鹿!!」
ゴンッ
「いだっ!」
土方は市村にゲンコツを落とした。
土方は美海達に内緒でここを出るつもりだったのだ。
「どういうつもりですか?沖田さんは留守なのは賛成です。でも、私は行けるでしょう」
美海は土方の前に立って睨み付けた。
土方さん、わざと私と沖田さんを残らせようとしているんじゃないか?
沖田は不服そうな顔で美海と土方を見ている。
「どういうつもりって、お前は総司の看病だ」
「…………」
ここで文句を言うと、なんだか沖田に気を使わせてしまう気がする。
美海は一人押し黙った。
「……先輩。お願いします。沖田隊長の風邪が悪化して誰もいないのも心配ですし」
市村が頭を擦りながら前へ出た。
多分、鉄くんは土方さんの意図を察している。
なんで逃げるの!?
二手に別れた…。
あっちはおそらく桂。
新撰組としてはもちろん桂を追わなければならない。
どうする…。
でも…!
グッと美海は顔を上げた。
「ハァハァ…。立花…何故わかったんだ?」
桂は後ろを振り向く。
「あれ?」
後ろに美海はいなかった。桂はとりあえず道から外れ、森の中に姿を消した。
「待ってくださー―――い!」
「嫌じゃあ!」
美海は坂本を追っていた。
「坂本龍馬ですよねー!?」
「違う!わしは才谷梅太郎ぜよ!」
「はぁ?あなたの顔どっからどう見ても坂本龍馬でしょ!」
グンッ
美海は坂本の前に周り込んだ。【改善脫髮】四招避開活髮療程陷阱,正確生髮! -
「ぅおっと!ここで捕まる訳にはいかんき!」
シュン!
ギィィィン!
「えぇぇぇ!?」
坂本は急に抜刀した。美海は何とか居合いで抜いて防ぐ。
ギリギリ…
重い………。
「捕まる!?私は捕まえるつもりなんてさらさらありませんよ!なんであなたを捕まえなきゃ駄目なんですか!」
お互い刀を引かない。
「へ?」
坂本からすれば美海は新撰組の有名隊士。捕まると思うのも当然だ。
「私はあなたとお話がしたいんです!だから桂も逃がしてあなたを追ったんですよ!」
だが美海は坂本がお尋ね者だとは知らない。単純に好奇心で追っていた。あの偉人である。それは誰でも会いたい。
「はぁ!?おんし…わしが誰だと思う?」
「坂本龍馬」
…コイツ…わかっとらん……?
「ぷ…おんし変わっとるのぉ!」
ニカッと坂本は笑うと刀を下ろした。
その瞬間に斬られると思い普通は下ろさないのだが、坂本は美海を安全と見なしたようだ。
「坂本 龍馬じゃ。よろしくなぁ!」
坂本は手を出す。
「た…立花 美海です!」
美海も手を握った。
目は輝いている。
ヤバい!坂本龍馬の手握った!
「知っとるよ。おんし新撰組じゃろ?何でわしを捕まえんのじゃ?」
「え?何でですか?」
美海は逆に聞く。
うーん。と坂本は考え込んだ。
「しかし…げにまっこと綺麗な髪じゃのう!」
坂本は急に美海の頭をガシガシと撫でた。
「え…いやぁ」
思わず照れてしまう。
「これはどうしたんじゃ?おんし異人さんとのはーふか?」
「いいえ。染めたんです」
「染める?」
坂本は近くの丸太に座った。ちょいちょいと美海を呼んでいる。
「はい。色を着けるんです」
美海も隣に座った。
「ほぉ…。じゃあ異国に長い間住んでたのか?この国の者じゃないじゃろ?」
坂本は目を輝かせる。
わしを見つけても捕まえないき…絶対にこの国の者じゃないぜよ。
「異国…とは言えませんが…」
「が?」
美海はこういう状況に陥ったのは久しぶりなため悩んでいた。自分が未来から来たということを言うか。
安易に言うのはよくないよね…。
うーん…。美海はゴクリと唾を飲み込んだ。
「実は……」
「実は?」
「実は………」
坂本はジッと美海を見ている。
「染めたってのは気にしないでください!実は地毛です!」
「地毛…?」
昔高杉にも髪は地毛だと言い張った覚えがある。
誤魔化し切れなかったが。
美海もドキドキしながら坂本を見る。これしか思いつかなかったのだ。
坂本はボケーッと美海を見ているが、ついに口を開けた。
美海は目をきつく瞑っている。
「本間か!すごいぜよ!」
坂本は目を輝かせている。
え…?
「え?」
「生まれつきか?すごいぜよ!」
確かに生まれつき茶髪の子はいるが、美海のようにここまで人工的な茶髪は日本人では起こらない。
もしかして…
ちょっと…
馬鹿…?
美海は予想外の結果にポカンとしている。もちろんこれでよかったのだが。
「あ。は…はい!純日本人です!」
ワシワシと坂本は美海の髪を触る。
まぁ。嘘じゃないしね?
「そういや流派はどこじゃ?居合いが凄かったきに」
「あぁ。えっと。天然理心流です?」
「何故に疑問形?確かにこれといった型はなかったのう…。ちなみにわしは北辰一刀流じゃ!」
な塗輿で、輿のすぐ脇には、齋の局と古沍が付き従っていたが、
濃姫が直にったのはこの二人だけで、その周りを囲む女たちは、どうやら信長付きの侍女衆のようだった。
しかも彼女たちは、まるで輿を隠すかのように、物々しく周囲を取りかこんでいる。
その様は、の御小姓たちにも異様に映ったのか
「あの輿には、どなたが乗っておられるのであろうのう?」
とをひそめ、小声で話し始めた。
「それがな──御台様のお輿らしい」【改善脫髮】四招避開活髮療程陷阱,正確生髮! -
「御台様!? 共に参られるとは聞いておらぬが…」
「何でも上様のりで茶会の手伝いをなされるらしい。が、出陣の途上であることをり、内々のご同行と聞き及ぶ」
「じゃからと言うて、何もあのように輿をお隠しにならずとも…」
「これ、何を話しておる!まぬか」
蘭丸にめられ、皆々 慌てて口をつぐんだ。
けしからんと言いたげな顔で、する蘭丸だったが、
彼自身も、濃姫の上洛については昨夜から疑問に感じており、今になってそれは益々深みを増している。
同行の理由が先ほど小姓たちが話していた通りだったとしても、腑に落ちない点も幾つかあった。
まず、城内の誰もが濃姫の上洛を知らず、全てが一部の者たちによって内々に運ばれていたことだ。
今 行列を成している者たちも正室の同行を知らなかったどころか、
濃姫が乗っている塗輿さえも、出立の刻限ぎりぎりになって門前に運ばれてきた物である。
濃姫ほど身分の高い奥方ならば、既に御殿内で輿に乗り込み、そのまま運び出されていてもおかしくはないのだが…。
それにいくら外聞が悪いからと言っても、やはりこの内密さはどこか妙だ。
正室の上洛であるのに、供する者がたった二人だけなのも引っかかる。
そういえば、信長の侍女衆を自身の輿の周りに配置したのは、蘭丸が知りる限り濃姫であったような気がする。
信長は列の先頭近くに位置し、濃姫のことに関しては今のところ何も口をんでいない。
『 ならば全て、御台様のご一存が働いてのことか…? 』
しかしに。
蘭丸は疑念をらませつつも、明確な答えが出る気配は一向になく、
ただひたすら、都に向かって歩を進めるしかなかった。
その頃 安土城に残った報春院は、胡蝶の隠し部屋の入口でもある、奥御殿の御仏間にいた。
何か思うところがあったのか、珍しく祭壇に安置された道三夫妻の御位牌に焼香し、
実に真剣な面持ちで双の手を合わせている。
やがて拝礼を終えた報春院は、祭壇に軽く一礼すると
「参りましょう──」
背後に控えていたお付きの侍女をって、開け放っていた入口の扉から、外の廊下へ出た。
侍女は仏間の扉を閉めると、鍵をかけようと思い、取手に下がっている錠前に手を伸ばした。
すると、前に進んでいた報春院がさっとを返して
「よい、そのままで」
と、厳しい声色で告げた。
「 ? されど、仏間の錠は常にかけておくようにと、御台様のお達しが…」
「いや、よいのじゃ、開けたままで」
「何故でございますか?」
「日々 閉ざし通し故、時には外の風を入れるのもよかろう。……それに」
報春院はろな瞳で御仏間を見つめると、溜め息混じりに呟いた。
「今はもう、その厚い扉で守らねばならぬものは、何もない故」
信長一行はその日の内に入京を果たしたが、本能寺に着いた頃には西の山に日が沈みかけていた。
鮮やかな色に染まった境内で、一行は僧侶たちによる手厚い出迎えを受けると
「──茶道具を頼んだ。傷一つ付けるでないぞ」
「──ははっ」
「──
と説教じみた不服を申し立て、確実に信長と衝突していたであろう。
それを考えると
『 殿の機嫌を損ねぬよう努めただけ、姫様も少しは成長なされたのであろうのう… 』
そう思うて差し上げなくてはなと、三保野はその口元に柔らかな笑みを湛えるのだった。
「──それはそうと」
外に向いていた信長の目が、ふと濃姫に移った。
「先達て末森の城より知らせがあってな。此度の戦勝と城移りの祝いを申しに、二日後、この清洲の城へ信勝と母上が参上致す事と相なった」
「まぁ、左様にございましたか。お二方にお会いするのも久方ぶりにございますね」
「そうじゃな。……母上の世話はそなたに任せたぞ。適当に相手をしてやってくれ」
「適当にだなんて─。報春院様は、殿の実のお母君ではございませぬか」【改善脫髮】四招避開活髮療程陷阱,正確生髮! -
「儂にとっての母は恒興の母である大御ちじゃ。同じ腹から生まれし信勝やお犬、お市を弟妹(きょうだい)と思えど、末森の母を母と思うた事などない。一度もな」
声を濁らせて語る夫の心中を、濃姫は慮(おもんぱか)った。
「殿と報春院様のご関係は、言うまでもなくよう存じておりまする。されど報春院様とて人の子、鬼ではございませぬ」
「何が言いたい?」
「一度心を開いて話し合(お)うてみては如何にございますか?」
「あの血の冷たい母と何を話せと申すのだ」
「殿の聡きところを見せ、昔のようなうつけではない事をお示しになられれば、報春院様とてきっと殿の良さをご理解下さいます。
今はただ、信勝様お可愛さのあまりお目が曇られているだけ…。
曇っているのならば、殿がご自身のお手で、それを拭って差し上げて下さいませ。それが関係改善の近道かと存じまする」
真摯に告げる濃姫を、信長は静かに一瞥すると
「もう良い、その話は──。末森の一行が挨拶に参る話が、何故に儂と母上の話になるのだ」
気鬱そうに独りごちると、目の前の妻をサッと自分の方へ引き寄せて
「母などどうでも良い。今の儂に必要なのは良き妻だけじゃ」
不意打ちに、濃姫の柔らかな唇を奪った。
姫は夫の端麗な顔の前で目を何度かぱちくりさせると
「と…殿っ、このような所で!」
恥じ入ったように軽く信長から顔を離したが
「案ずるな、誰も見ておらぬ」
と、背後に控える侍女たちの姿をチラと見てから、再び姫と唇を重ねた。
お菜津ら若き侍女たちは、突然の夫婦の接吻を前に、その顔を赤らめながら俯(うつむ)けてゆく。
三保野だけ、ちょっと嬉しそうに二人の姿を見ていた。
顔から火が出るほど恥ずかしいはずなのに、押し寄せてくる恍惚の波に次第に拐われ始めていた濃姫は、夫の身体が自分から離れたことにも気付かなかった。
「……殿?」
と薄く目蓋を開いた時には
「──母上の件、よしなに頼んだぞ」
信長は表御殿に続く渡り廊下を歩きながら、後ろ背に手をひらひらと振っていた。
「と、殿!お待ち下さいませ!まだお話は終わっておりませぬぞっ」
立ち止まることのない信長の背に叫びながら、濃姫は『やられた─』と、思わず悔しさを満面に滲ませた。
完全に話を逸らされてしまった。
これではまるで
『 ……先程の私と同じではないか 』
誤魔化しを誤魔化しで返されてしまうとは。
濃姫は怒るに怒れず、ただ唖然とした表情で去って行く信長を見送るしかなかった。
そして二日間後の昼四つ(午前10時頃)。
三保野が問うなり、濃姫は着物の左袖の中に手を入れ、やがて奥で何かを掴んだらしいその手を、素早く袖から引き摺り出した。
「 !? …ま、姫様。美濃の殿様の御刀、お渡しになられなかったのですか」
昨夜、信長に預けると心に決めて寝所に向かった主人が、未だに道三の短刀を所持している事実に三保野は驚いた。
「そうではない。お渡しする事はお渡し致した」
「では、お受け取りになられなかったのですか?」
「いや、受け取って下された」【改善脫髮】四招避開活髮療程陷阱,正確生髮! -
「はて。どういう事にございましょう?」
「今朝方、急にまたお返し下されたのじゃ。都の鞠が手に入った故、お市様にはそちらを贈ると申されてな。
この刀は、これまで通り私が持っていれば良いと仰せであった」
淡々とした無感動な言い方で濃姫は事の詳細を語った。
その奇妙な話に、三保野も首を傾げずにはいられなかった。
「おかしげな事にございますな。一度はお渡しになられようとして、殿から返され。
またその殿から所望された故、お渡しされようとしたら再び返されて…。
一度目はともかくとしても、此度は殿からのご希望によるものでしたのに、どういう事でしょう?」
「分からぬ。分からぬ故かように悩んでおるのではないか」
濃姫はやや不貞腐れたように言うと、夢想に耽るような表情をして虚空を見つめた。
本来ならば、大事としていた刀が手元に戻り喜ぶところだが、今の彼女にはそういった感情がまるでなかった。
《 殿を信じ、再び父上様の短刀を手放す決意をしたというのに 》
《 他の品が見つかった故いらぬとは、いくら何でもあんまりではないか 》
と、姫は憤りすら覚えていた。
仮にこれが自分をからかってやった事だとしたら、絶対に許せないと思った。
もしそうならば、短刀に込められた父の思いも、尾張へ嫁すにあたる自分の信念や決意をも信長は軽んじた事になる。
大切な物だからこそ彼に預けようと決心したというのに、それを利用して自分を謀ろうとするとは、何と心無い所業であろう。
怪訝な思いが次第に怒りへと変わり、濃姫は事の真相も分からぬ内から、推測によって独り苛立ちを募らせていた。
──ところが、そんな姫の苛立ちは、思いがけずもその日の内に解消する事となる。
それは、濃姫が気分転換のためにお菜津ら侍女たちを引き連れて、城内の典麗な庭を散策していた時の事。
濃姫が、庭の水辺に架かる太鼓橋をしずしずと歩いていると
「──じゃが、それでは殿の気を損なうだけではないか!?」
「──そうであったとしても、これは渡せぬ。…お断りするしかないのじゃ」
近くの松の木の陰で問答する、前田犬千代と池田勝三郎の姿を見かけた。
若き信長の小姓たちがこんな所で何をしているのか?
濃姫は訝しげに眉を寄せながら、そっと両人の側へと歩み寄った。
「お二方、かような所で何をなされておいでじゃ?」
「 ! ──これは、お濃の方様っ」
姫の声に勝三郎と犬千代はハッとなって振り返り、慌ててその場に跪(ひざまず)いた。
「勝三郎殿、それに犬千代殿も、二人してこそこそと何の密談です?」
「密談などと、とんでもない。我々は…ただ……」
「“ただ”何じゃ」
濃姫が訊くも、勝三郎はなかなか答えようとはしなかった。
それどころか口の端を固く結び、そのまま暗澹として項垂れてしまう。
よほど言い辛い話なのか?
濃姫が困惑気に勝三郎を見下ろしていると
「畏れながら勝三郎殿は、殿に難儀を強いられている由」
横の犬千代がはきはきとした口調で答えた。