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と説教じみた不服を申し立て、確実に信長と衝突していたであろう。
それを考えると
『 殿の機嫌を損ねぬよう努めただけ、姫様も少しは成長なされたのであろうのう… 』
そう思うて差し上げなくてはなと、三保野はその口元に柔らかな笑みを湛えるのだった。
「──それはそうと」
外に向いていた信長の目が、ふと濃姫に移った。
「先達て末森の城より知らせがあってな。此度の戦勝と城移りの祝いを申しに、二日後、この清洲の城へ信勝と母上が参上致す事と相なった」
「まぁ、左様にございましたか。お二方にお会いするのも久方ぶりにございますね」
「そうじゃな。……母上の世話はそなたに任せたぞ。適当に相手をしてやってくれ」
「適当にだなんて─。報春院様は、殿の実のお母君ではございませぬか」【改善脫髮】四招避開活髮療程陷阱,正確生髮! -
「儂にとっての母は恒興の母である大御ちじゃ。同じ腹から生まれし信勝やお犬、お市を弟妹(きょうだい)と思えど、末森の母を母と思うた事などない。一度もな」
声を濁らせて語る夫の心中を、濃姫は慮(おもんぱか)った。
「殿と報春院様のご関係は、言うまでもなくよう存じておりまする。されど報春院様とて人の子、鬼ではございませぬ」
「何が言いたい?」
「一度心を開いて話し合(お)うてみては如何にございますか?」
「あの血の冷たい母と何を話せと申すのだ」
「殿の聡きところを見せ、昔のようなうつけではない事をお示しになられれば、報春院様とてきっと殿の良さをご理解下さいます。
今はただ、信勝様お可愛さのあまりお目が曇られているだけ…。
曇っているのならば、殿がご自身のお手で、それを拭って差し上げて下さいませ。それが関係改善の近道かと存じまする」
真摯に告げる濃姫を、信長は静かに一瞥すると
「もう良い、その話は──。末森の一行が挨拶に参る話が、何故に儂と母上の話になるのだ」
気鬱そうに独りごちると、目の前の妻をサッと自分の方へ引き寄せて
「母などどうでも良い。今の儂に必要なのは良き妻だけじゃ」
不意打ちに、濃姫の柔らかな唇を奪った。
姫は夫の端麗な顔の前で目を何度かぱちくりさせると
「と…殿っ、このような所で!」
恥じ入ったように軽く信長から顔を離したが
「案ずるな、誰も見ておらぬ」
と、背後に控える侍女たちの姿をチラと見てから、再び姫と唇を重ねた。
お菜津ら若き侍女たちは、突然の夫婦の接吻を前に、その顔を赤らめながら俯(うつむ)けてゆく。
三保野だけ、ちょっと嬉しそうに二人の姿を見ていた。
顔から火が出るほど恥ずかしいはずなのに、押し寄せてくる恍惚の波に次第に拐われ始めていた濃姫は、夫の身体が自分から離れたことにも気付かなかった。
「……殿?」
と薄く目蓋を開いた時には
「──母上の件、よしなに頼んだぞ」
信長は表御殿に続く渡り廊下を歩きながら、後ろ背に手をひらひらと振っていた。
「と、殿!お待ち下さいませ!まだお話は終わっておりませぬぞっ」
立ち止まることのない信長の背に叫びながら、濃姫は『やられた─』と、思わず悔しさを満面に滲ませた。
完全に話を逸らされてしまった。
これではまるで
『 ……先程の私と同じではないか 』
誤魔化しを誤魔化しで返されてしまうとは。
濃姫は怒るに怒れず、ただ唖然とした表情で去って行く信長を見送るしかなかった。
そして二日間後の昼四つ(午前10時頃)。