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「君に出逢えて本当に良かった

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「君に出逢えて本当に良かった

「君に出逢えて本当に良かった。割り当てられた相手との婚姻だったらつまらない夫婦生活だっただろう。」

 

 

だからこそ,馬鹿な事をした自分を恥じて後悔の念に苛まれ続けるのだと色男の顔が弱々しくなった。

三津はそんなに思いつめないでと苦笑しつつ,高杉とおうのが頭を過ぎった。

 

 

「高杉さんも……本妻さんとの婚姻がお互い恋をしての物なら……今の現実は変わってたんでしょうか。」

 

 

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スパッと歯切れよく桂が答えたもんだから三津は目を丸くした。

桂はその顔可愛いねと笑いながら話を続けた。

 

 

「どんな形でもおうのさんとは出逢う運命だったかもしれない。

決まっている運命をそのまま辿っているのだとしたら,おうのさんとの出逢いもその道に含まれていて避けては通れなかったと思う。

だから君と九一が惹かれ合うのも運命の内だと私は考えた。」

 

 

「どんどん話が壮大になりますね。」

 

 

私達は難しく考え過ぎてるのかなと三津はくすくす笑った。

 

 

「じゃあ難しく考えるのは一旦止めて私達は私達の今を楽しもう。

人の事ばかり気にしないでたまには自分の幸せばかりを考えよう。

今の三津には何が幸せだい?」

 

 

たらふく甘味を食べる事?簪や可愛い小物を選ぶ事?私に叶えられる幸せはある?と桂は愛しい君になら何だってするよと口説き倒して三津を赤面させた。

 

 

「もう充分幸せですよ。だってこんなに愛を受け取ってます。形じゃなくても充分です。」

 

 

その返答に今度は桂が目を丸くして何度も目を瞬かせた。

 

 

「この押し付けがましい愛を……幸せだと言ってくれるのか……。」

 

 

「自分で押し付けがましいって言わない方がいいですよ?」

 

 

それだとただの嫌がらせに聞こえると三津は笑った。

 

 

「だって嫌がらせと思ってないんだよね?身勝手な愛の押し売りだと思ってないんだよね?」

 

 

「まさか嫌がらせのつもりやったんですか?」

 

 

それなら話は変わってくる。三津は眉手を寄せて疑いの眼差しを向けた。それには滅相もないと桂は慌てて否定した。

 

 

「私は常に本気だよ。でも私の一方通行だから嫌がらせと思われても仕方ないと思ってて……。」

 

 

『あぁ……。小五郎さんは自信がないんやな……。』

 

 

歯が浮く程の口説き文句を並べる彼はいつも余裕を醸し出していたのに,今やその面影はない。

その余裕と自信をへし折ったのは自分だったなと三津は改めて自覚した。

それでも多少自信を取り戻した桂を思い浮かべたら,ちょっと面倒くさい……

そう思った時,長州の人って極端な人しかおらんの?と口走っていた。その一言に桂は何とも言えないと苦笑いを浮かべた。

 

 

「まぁ,国を動かそうとしてる方達なんで私の常識の範疇には収まらへんのは分かりますけどね。」

 

 

その破天荒なみんなの個性的な一面は好きですよとくすくす笑った。三津の穏やかな笑みに桂の表情と心が解れていった。

 

 

『何だかんだで……仲良くやってるならそれでいい。』

 

 

二人の笑い声を聞いて,入江は気取られないようにそっと部屋から離れた。こんな詮索らしくないなと自嘲しながら小さな溜息をついた。

 

 

 

 

 

夕餉の時刻。広間はいつものように賑わっているが高杉の居ないその場は賑やかなようで少し静かだった。

ただ,入江と桂が並んで食事する姿にはみんなの好奇な眼差しが向けられ,妙なざわめきがあった。

大体みんなが何を言いたいかを察した三津は何とでも言ってくれと半笑いで給仕をしていた。

 

 

「木戸さんも近くに三津との家を借りたらどうです?ここじゃ周りに気ぃ遣うでしょ。」

 

 

高杉のようにそっちに入り浸ればいいのにと入江に言われ,

 

 

「何故私が気を遣わねばならんのだろうな?」

 

 

この場において立場上一番偉い自分が何故周りを気にしなきゃならんのだと不服を申し立てた。

敬い崇め称えろとまでは言わない。言わないが,もう少し敬意を持てと周りを見渡して好奇の視線を蹴散らした。

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